HOLGA東京近景〈ドウゲンザカ〉


渋谷道玄坂のアーケード。
13年前と変わってない。

カメラマンアシスタントをしていたころは、
毎夜このアーケードをくぐっていた。

事務所が神泉だったので、
道玄坂のホテル街が近道のルートだった。

カネもなく、時間もなく、疲労だけがたまっていく。

朦朧とした目つきで、うらめしくヤブ睨みを利かせながら、
ホテルの立ち並ぶ歓楽街をうろついていた。

何が起きるわけでもなし。
何ができるわけでもなし。

ただ、行き場のない欲望を抱かえ、
彷徨するのが関の山。

そうなると、ストイックにすべてを拒絶するしか道はなかった。

友だちとも連絡を絶ち、
飲み会などの集まりにも参加せず、
ひたすら孤独を愛し、自己完結の世界を好んだ。

小難しい書物に対峙し、
難解な文章を写経のように丸写しし、
ノートが文字で埋まることに快楽を感じていた。

かなり暗い25歳だった。

13年ぶりにその道玄坂を歩いてみると、
今でもその冷え切った「心」を思い出す。

この土地は、相も変わらず歓楽街だ。
人の欲望を呑み込むことで、生成している。

しかし、あの時の鬱積した思いは、
今の自分にとっては、「宝」だ。

あの時の屈折があるから、今がある…。
あの暗さが、今の自分を生成している。

だから、この土地が好きなのだ。

HOLGA東京近景〈マチビト〉


人込みの中に、ポツネンと坐っている男性。
人が多いと返って気になる。

勝手な想像を膨らませれば、
孤独を抱かえ、時間を弄んでいるところか。

   ●

佐世保の乱射事件には参った。

あれが、孤独のなせる犯罪だとしたら、
なんとも哀れ。

「冥土に道連れ」
そんなワガママが殺人の理由だとすれば、
やりきれない。

孤独を抱えきれなくなったから、
自分の人生におサラバした…。
ひとりではおサラバしたくないから、
ふたりを道連れにした…。

巻き込まれたふたりの家族は
どこに救いを求めればいいのだろう。

HOLGA東京近景〈コンパニオン〉


渋谷の街中にて。

午前中の人通りもまばらな時間から、
DoCoMoのガールがデモンストレーションなのか、
派手な格好でマイク片手に説明をしていた。

その格好が、コスプレっぽくって…思わず撮影。

年末まであと2週間だというのに、
沖縄では春商戦のプレゼンテーションが2本。

auケータイとDoCoMo、SoftBankのしのぎを
どのように戦うか…毎日アタマを悩ませている。

巷では、忘年会続きで少々「浮かれポンチ」な空気。

こちらも毎日のように、飲む機会が組み込まれ、
仕事どころではない状況。

はやくすべてを忘れて、快楽に溺れたいところだが。
そんなときに限って、仕事が立て続くのだ。

HOLGA東京近景〈クリスマス〉


12月に入ると、どこもかしこもクリスマス一色。
年々、イルミネーションも盛んになる。

町内会のイベントとして
イルミネーションを競ったり、
電力会社がコンテストを催したり、

この季節だけは
エネルギー放出が美徳…のようだ。

8月には「ろうそくの夜」などと称して
街の灯りをすべて消そう…と呼びかける活動も
あったりするけど…。

新宿南口の高島屋13階にある
「つばめグリル」で“ハンブルグ”を食べる。

週末だから、午後の3時だというのに、列が出来ている。

家族連れや、カップルが、
長めの昼食もしくは早めの夕食を楽しんでいた。

赤ワインをボトルでオーダーし、
生カキを貝のまま、食す。
…そんな贅沢な食事をしている老夫婦。

となりでは、女性同士が買い物帰りに遅めの昼食。

…どこにも属さず、ひとりハンブルグを食べる。

いつもとは違う空間、いつもとは違う時間。
そんなポジションを楽しむ。

HOLGA東京近景〈パイロン〉


カラーコーンが光の中に散在していて、
ボクは思わず立ち止まって、シャッターを切る。

その出で立ちが、妙だし、
なにしろ目立つためのデザインだから、
とにかく目を引くのである。

まして、このように散在してあると、
インスタレーションのようで、空間が別物になるから、楽しい。

日常生活の風景や常識が、
パイロンの存在ひとつで覆されるのである。
決して溶け込まない。

どこまでも異物に徹している。
その潔さが、ここちよい。

HOLGA東京近景〈エンゼツ〉


渋谷の駅前では、なにやら重苦しい雰囲気。
日曜の昼間に「石破」と「町村」の政治家が、
〈エンゼツ〉を繰り広げるようだ。

取り巻きが面白い。

警察官も異様なほど多かったし、
報道陣も多数詰めかけていたが、
やはり政治家を支える人たちの異様さが目立つ。

特にSPと呼ばれる人たちの異彩の放ち方は、
どんな素人でもわかるものだ。

彼らが居ることで、返って現場が目立つ…ということはないのだろうか?

そのほうが世間の目が集中して、安全なのだろうか?

その周りを取り囲む支援者たちも異様。
老若男女、世代を超えて、支援する政治家にエールを送る。

なんのために?

よりよい日本を望んでいるから?

同じ地域の出身だから?

どうしてもボクには
政治家が私利私欲の塊に見えて仕方ない。

その取り巻きも。
システムすべてが。

胡散臭いのである。

HOLGA東京近景〈ガングロ〉


渋谷で久々に「ガングロ」を目撃。

山中で出くわした「山男」かと
見まがうがごとく興奮して、追いかける。

顔を真っ黒に塗りたくり、
目の回りを白くした逆パンダメイク。

ピンク色のエクステンションを
ショッピングママよろしく
大量に結びつけている。

どうみてもレゲエのおじさん。

ここまでの変貌が、人を大胆にさせるのだろう。
道行く人が振り返ることを快感にさえ、感じているご様子。

究極のコスプレとも言える。

HOLGA東京近景〈エロス〉


この週末は東京へ。

今年最後の東京詣で。
日曜日は見事に晴れ渡り、絶好のHOLGA日和。

光と影を追い求めて、
午前中の間、新宿と渋谷を闊歩する。

人が多いと、被写体も多い。

それでも日曜日だけあって
いつもの東京よりはゴミゴミとせず、
開放的な天気と相まって、気分よく写真が撮れた。

これは「大森克己」風、
「アイサツ」ショット。
エロスが基本。

大森さんは、元気だろうか?

東松照明「Tokyo 曼荼羅」


東松照明「Tokyo曼荼羅」

東京都写真美術館で12月16日まで開かれている。
時間のない中、駆け足で作品を観た。

その数、307点。

未発表の写真は銀塩プリントではなく、EPSONの出力である。

まずそこに驚いた。
どう見ても差がない。
ほとんど区別がつかない。
見事な再現性である。

77歳にして新しいモノへ挑戦する
その姿勢がすばらしい。

しかも、1点1点が非常に力強い。
階下では、11月25日まで
写真新世紀東京展2007が開かれているのだが、
そちらの写真群と比較すると、そのクオリティが歴然。

東松照明の写真は、鬼気迫るモノがあるのだ。
そこは時代ゆえの狂気が含まれているのかもしれない。
しかし、執拗なまでにフレームに収めようと
躍起になっている写真家の魂がしっかり宿っている…からだと思う。

日本列島を縦横無尽に歩き回り、
収めた写真の数は、いったいどのくらいあるのだ!

その膨大なネガから未発表作品を選び抜く作業も相当なはず。
そこまでして初めて、写真表現を極めている…と言える。

「美ら島フォトミュージアム」のプロジェクトでは
発起人となって、沖縄県内の写真家をひとつにまとめた。

東松照明の情熱が、写真に宿り、ひとに宿る。

希有な人物と接点が持てたことに、ひたすら感謝した。

HOLGAの魅力


中国製カメラHOLGAを使用しはじめて1ヵ月。
その魅力に、ぐいぐい引き込まれている。

露出固定。
⇒シャッタースピード固定、絞り固定。
ピント適当。
⇒4種類の人物マークで合わせるしかない。
レンズ不明瞭。
⇒四隅が必ず露出不足となって翳る。
巻き取り適当。
⇒撮影した後に巻き取りを怠ると、多重露光となる。

カメラとしては、「ないないづくし」な機能性。
あまりにもアナログで戸惑ってばかりだったが、
上がってきた写真を見て、頭が下がった。

このアナログ感覚は、見事だ。
確かに撮影をする時は、かなり適当。
できるだけ被写体に意識はするが、
ピントも合わせられない、露出も合わせられない…じゃ
ほとんど「念写」に近い。

だから、空気がそのままそっくり写り込んだような仕上がりになる。

この蓮池の写真も、夕暮れ時にとりあえず撮ってみた。
予想通りの露出不足で、がっくりしながらも
よくよく見てみると、んんんん。
どこにもピントは合っていない。
全体的にぼやけた…記憶を辿るような仕上がり。

それがまた、モネを彷彿とさせるような出来映え。

この偶然性が、HOLGAの魅力。
もしかするとRolleiFLEXより相性が良いかも。

今後の撮影が楽しみ。