【KINGSTON】STINGの夜 その5


空がだんだん、白けてきた。
デブッチョは、バックステージにも戻ってこなくなった。

完全にボクは置いてけぼり…となった。

怒りだけが、宙ぶらりんに、白茶けた空に浮かんでいた。

クレーンに吊された大音量のスピーカーからは
ボクの耳には何も届かなかった。

どんどん色浅くなる星空に、無音の空間が広がっていた。

黒い人間の集まりが、朝日に照らし出され、
乱反射をしていた。キレイな光景だった。

そのキレイな光景も、無感覚に広がっていた。
もう絶望的だった。誰も味方にはついていなかった。

…カメラがない…その事実が、ココロを空白にしていった。

なしのつぶてのまま、時間だけが無情に過ぎていった。
ステージではすでに勝敗も決まり、三々五々に黒光りの人々はゲートを出て行く。

濃紺から白へのうつくしいグラデーションの青空と
日輪の過剰な光と、群衆のシルエットと。

疲れ切ったココロとカラダに、最高にフォトジェニックな瞬間を提供して
完膚無きまでズタズタになって、呆然と歩く。

日輪を背負って歓喜するジャマイカ人たち。

客待ちタクシーや乗り合いクルマが
クラクションを鳴らし、家路へ急ぐ。

すでに7時を廻った。

ジャマイカ3日目にして
最悪な問題を抱え、解決の糸口もないまま、
宙ぶらりんな気持ちで、ボクはホテルへと向かった。

結構なボディブローだった。
足腰がふらついて、セコンドの支えなしには歩けない…
…そんな気分だった。

      ●

さらに驚いたことには、
このイベントは警察が主催だということ。
警察の威信を示すために、
事故も死者も出さないよう、最大限の努力をしている…ということ。

「SWAT」と書かれた制服を着て、ライフルを肩にかけた
いかつい連中がステージ袖で威厳を掲げていたのも
そんな背景があってのことだった。

ジャマイカ最大のイベントを滞りなく仕切る。

…ということは、警察の威信で
ボクのカメラも見せしめとして盗まれたのか…。

     …警察が!?

…その…意味が…つかめないのですが…。

【KINGSTON】STINGの夜 その4


12月27日、午前5時。
日の出にはまだ早い。
しかし、会場はものすごい熱気。

爆音と怒号と嬌声と、
スプレー缶とロケット花火とフラッグと。

会場に詰めかけるジャマイカ人の群衆に
押しつぶされそうになりながらゲート前まで戻る。

   ああ、ここからは無音状態。

あまりのサプライズに、周囲の音が記憶にないのだ。

   5時から7時までの音の記憶がない。

あるのは、心臓の高鳴りと、こめかみに脈打つ怒りのシグナルだけ。

         
       「 ………!!!!」
       とにかく、驚いたのだ。
      なんといっても、驚いたのだ。

ゲート前の約束の時間に、
事務所を訪ねてみると…
そこには、誰もいなかった。

      それはもう、サプライズなのだ!

その瞬間、「やられた!」と悟った。(もう遅いのだけどね)
預けたカメラの一切合切が盗まれたと合点した。
ああ、なんという過ちを犯した!!!!と
何度も何度も自分を悔いた。

しかし、このまま引き下がっても仕方がない。
まずは、やれることだけ、とにかくやろう。

ゲート前で幸いにして、入場時に難癖をつけてきたデブッチョがいた。
「ヘイ!事務所の連中がいないんだけど、オレのカメラ返してもらおうか!」

気持ちとは裏腹に、英語ではどのように伝わったのか…。
そのデブッチョは、面倒臭そうにボクをバックステージまで連れて行く。

     とにかく、カメラだ。
     沖縄からわざわざプロ仕様のNikonを借りてきたのだ。
     なくすわけには、いかない。
     キズひとつなく菓子折といっしょに、返す手はずなのだ。

血潮が脳みそを掻き回した。
真っ赤な顔をしていたに違いない。
他のスタッフも、目を背けて相手にしない。

そりゃそうだ。

ステージは最高のクライマックスを迎えている。
観客はもちろん出演者たちも総出で
ステージの行く末を見守っている、まさにその時なのだ。

何万というオーディエンスの彼方からは
日輪が今まさに昇天しようとしている。

そのなんと美しいこと。

      あああああ、カメラ!!

この時ほど、カメラの不在を嘆いたことはない。
なぜ、この決定的な瞬間をボクはみすみす見逃しているのだ。

   

【RENT】No Day but Today


RENT-Trailer
RENT-on broadway
RENT-wikipedia

奇しくも作家の命日に
どっぷりと「RENT」の感動を味わってしまった。

高良結香さんの取材をした時から
「RENT」は気になる作品として記憶にあったが、
こんな感動的な…しかも運命的に産み出された作品だとは
今まで知らなかった。

ジョナサン・ラーソン。
「RENT」を7年間かけてカタチにした男。
35歳という若さで、「RENT」初演の朝、台所でひとり召された男。

1988年の構想スタート時はAIDSが脅威の時代であり、
実際ジョナサンの友人も3人がAIDSで亡くなっている。

自己を表現することのすばらしさと
今日という一瞬を精一杯生きることのすばらしさを
友人の死を通して鮮烈に描いている「RENT」は
楽曲や歌詞の力強さで、ボクの脳天にがつんと響いた。

そして「RENT」の成り立ちそのものが
描かれた世界そのままであることを知って、
さらに今日1月25日がジョナサンの命日であり、
初演の当日であることを知って、
ボクは戦慄し、涙を流した。

52万5600分。
1年を分で計った数だ。

 One song Glory
 One song Before I go Glory
 One song to leave behind
 Find one song One last refrain

 素晴らしい曲を 天に召される前に
 後世に残る名曲を書きたい
 最後の曲に 命を吹き込みたい

ジョナサンのその熱い想いが結実して、今日ボクに届いた。
そんな気がしてならない。

【RENT】Seasons of Love


525,600 minutes,
52万5600分
525,000 moments so dear.
52万5600分の貴重な時間
525,600 minutes –
52万5600分
how do you measure, measure a year?
1年を計る基準は何?

In daylights, in sunsets, in midnights, in cups of coffee.
昼、夕焼け、深夜、飲んだコーヒー
In inches, in miles, in laughter, in strife.
インチ、マイル、笑い、ケンカ

In 525,600 minutes –
52万5600分という時間
how do you measure a year in the life?
人生の1年をどうやって計る?

How about love?
愛ではどうだろう?
How about love?
愛では計れるだろうか?
How about love?
愛を数えてみよう
Measure in love.
愛で時を刻み 愛の季節を作ろう
Seasons of love.
愛の四季が巡る

525,600 minutes!
52万5600分
525,000 journeys to plan.
52万5600分の旅がある
525,600 minutes –
52万5600分
how can you measure the life of a woman or man?
どう数えるの?男や女の人生を

In truths that she learned,
彼女が知った事実
or in times that he cried.
それとも彼の涙
In bridges he burned, or the way that she died.
彼の旅立ち 彼女の死

It’s time now to sing out,
大声で歌おう
tho the story never ends
物語は終わらない
let’s celebrate remember a year
友と過ごした1年を祝おう
in the life of friends.

Remember the love!
愛を忘れてはいけない
Remember the love!
愛は天からの贈り物
Remember the love!
愛を分かち愛を広めよう
Measure in love.
愛で時を刻み
Seasons of love! Seasons of love.
愛の季節を作ろう 

あなたの人生を愛で計ろう

      ●

今日はジョナサン・ラーソンの命日。
Jonathan Larson, 1960年2月4日 – 1996年1月25日

[youtube]RENT-Seasons of Love

【KINGSTON】STINGの夜 その3


暢気にNikonフル装備を預け、
身軽になった足取りでステージ前の
柵に囲まれたVIP席へ向かう。

こちらは一緒に行った香菜ちゃんのblog「カナリヤの奏」。

周りの人間がみなジャマイカ人という状況のイベント自体
初めてのことなのだが、
これだけ(何万人いたんだろうか…10万人は下らないのでは?)の
ジャマイカ人に囲まれる経験も初めて。

みな暗闇と同化する肌合いだから、
白目が迫ってくる感じで、落ち着かない。

おまけにみなさん、年に一度のお祭りに
心底楽しんでいるご様子で、耳横で絶叫するわ、
スプレー缶にライターで火を付け、
1mほどのフレイムを頭上に発射し、
危ないのなんのって。

ロケット花火が何十発とステージへ向けて飛んでいくは、
大きな旗が振られ、Big Frameはゆらゆらと揺れ…。

途中でVIP席のフェンスが倒れ、
怒濤のように人が入り乱れ、
もはや完全に身動きが取れない状態まで。

こちらは一緒に行ったもうひとりの女性、文栄さんのblog「DAICHI [旭] AKIRA」。

夜中の4時頃。

ステージもヒートアップ!
VIP席は人で埋め尽くされ、
PRESSと称した日本人たちはみな
ステージ手前の高台によじ登り、
難を逃れようとしている。

…約束の5時までもう少し。
 これは早めにVIP席を逃れたほうがいいな…。

カメラが無事帰ってくるのか、不安が募る。
とにかく、ここは約束通りゲート前まで戻ったほうがいい。

…残念なことに見逃してしまったが、イベントはこれからが正念場だった。

【KINGSTON】STINGの夜 その2


「Hey!,No Camera!」

Hey!という呼びかけは
全然気持ちよくない。

相手を苛立たせるに余りある呼びかけだ。

まったくもってデカイ態度だ。
ジャマイカ警察主催のイベントだと
聞いていたが、こいつらポリスなのか?

ゲート前の事務所まで連れて行かれ、
カメラを置いていけ…とぬかしやがる。

この時に最後まで抵抗すべきだった…と
明朝ものすごく後悔することになるのだが、
苛ついていたこともあり、早く切り抜けたかった気持ちもあり、
言われるままにカメラを預けてしまった。

これは大いなる間違い。

「ジャマイカでは、モノを預けたら
 100%戻ってこないから、絶対預けないで」

13年在住のナイト彩子さんの忠告。
そんな忠告さえ、事前に聞いていれば…。

「明日の朝5時に取りに来て。返すから。」
ドデカイ図体の男の上司らしき女性が
ぞんざいに言い放つ。

「デポジットの証明をください」
とにかくそのまま渡してしまったら
後で問題になりそうだ…と、拙い英語で尋ねたところ…

「そんなモノはない」
…と一喝されてしまった。

これも後で思えば、十分伏線となっていたことなのだ。
彼女はこの時すでに盗もうとしていたに違いない。

【Bob Marley】So Much Trouble in the World


[youtube]So Much Trouble in the World

So much trouble in the world
今の世の中 問題ばかり
So much trouble in the world
この世の中 問題ばかり

Bless my eyes this morning
朝 祈りをささげ 
Jah sun is on the rise once again
JAHの陽が再び昇る
The way earthly thin’s are goin’
今の地球じゃなにが起きても
Anything can happen.
不思議はないさ

You see men sailing on their ego trips,
奴らはスペースシップに乗り
Blast UPON their space ships,
エゴ・トリップへと旅立つ
Million miles from reality:
現実から100万マイルも離れ
No care for you, no care for me.
君のことなど知らん顔

So much trouble in the world;
今の世の中 問題ばかり
So much trouble in the world.
この世の中 問題ばかり

All you gotta do: Give a little (give a little),
きみがしなければいけないことは
take a little (take a little), give a little (give a little)!
ほんの少しを与えることだ

One more time, ye-ah! (give a little) Ye-ah! (take a little)
Ye-ah! (give a little) Yeah!

So you think you’ve found the solution,
きみがみつけた解決策も 
But it’s just another illusion!
実はただの幻なのさ
(So before you check out this tide),

Don’t leave another cornerstone
流れの中から抜け出す時には
Standing there behind, eh-eh-eh-eh!
いしずえを忘れちゃならない

We’ve got to face the day;
その日は必ずやってくる
(Ooh) Ooh-wee, come what may:
たとえ何があろうと
We the street people talkin’,
俺たちストリートピープルは伝えるんだ
Yeah, we the people strugglin’.
そして闘うのさ

【KINGSTON】STINGの夜 その1


STING2008Clip-Mavado VS Kartel
STING 2008 最高!
Mavado

[youtube]Vybz Kartel-Ramping Shop
[youtube]Mavado-Last Night
[youtube]Movado-Top Shotta Nuh Miss

12月26日(金)。
Jamaica最大のイベントSTING。
DJバトルの紅白歌合戦。

ボクはこのイベントで2度の悔しい思いをすることになる。

ひとつはカメラを盗まれたこと。
ひとつはこのイベントを写真に収められなかったこと。

      ●

Bob Marleyから止まっている
ボクのようなレゲエファンにしてみれば
STINGは刺激が強すぎる。

夜の9時から朝の7時まで
文字通り夜通し歌いまくるイベントで
ジャマイカ中のレゲエファンは狂喜乱舞する。

そのすざましさと言ったら…!

まずはことの成りゆきを
事実にのっとって書いていきたい。

      ●

ボクたちはRickieのタクシーで
夜の9時に会場まで向かった。

チケットはVIP席。

5000J$。
柵に囲まれたステージ前のエリアだ。

カメラの持ち込みができるという
あやまった情報を鵜呑みにし、

ボクはゲート前まで沖縄のカメラマンに借りたNikonを
クリップオンとモータードライブまでフル装備して
持ち込もうとしていた。

VIP席のチケットを見せ、
プレスのような態度でゲートを過ぎようとした、その時
デカイ図体の男が行く手を阻んだ。

「No Camera!」

【Bob Marley】Rat Race


Uh! Ya too rude!
Uh! Eh! OH What a rat race!
Oh, what a rat race!
Oh, what a rat race!
Oh, what a rat race!
This is the rat race! Rat race! (Rat race!)
こいつはイタチごっこ 愚かなイタチごっこ

Some a lawful, some a bastard, some a jacket:
法を守るもの 法を破るもの そして管理するもの
Oh, what a rat race, yeah! Rat race!

Some a gorgon-a, some a hooligan-a, some a guine-gog-a
ゴルゴン ギャング モルモット このイタチごっこの中に
In this ‘ere rat race, yeah! 

Rat race!

I’m singin’ that
When the cat’s away,
猫がいなけりゃ ねずみが騒ぐ
The mice will play.

Political voilence fill ya city, ye-ah!
政治の暴力が街にあふれる
Don’t involve Rasta in your say say;
ラスタを巻き込まないでくれ
Rasta don’t work for no C.I.A.
ラスタはCIAなんかに手をかさないのさ
Rat race, rat race, rat race! Rat race, I’m sayin’:

When you think is peace and safety:
君が平和と安全を思う間に
A sudden destruction.
突然の破滅
Collective security for surety, ye-ah!
ホントの集団保証を

Don’t forget your history;
歴史を忘れずに己の運命を悟るんだ
Know your destiny:
水は粗末にしながら
In the abundance of water,
愚か者は渇く
The fool is thirsty.

Rat race, rat race, rat race!

Rat race!

Oh, it’s a disgrace
見るに耐えないんだ
To see the human-race
イタチごっこの人間たち
In a rat race, rat race!

You got the horse race;
馬のレースもある 犬のレースもある
You got the dog race;

You got the human-race;
人間のレースだってある
But this is a rat race, rat race!
だけどこいつはイタチごっこ

      ●

ジャマイカ最大のイベントに参加してみて
The STING
その「イタチごっこ」な有様を実感するような事件があった。

【KINGSTON】クリスマスイブの夜 その4


「ガンポイント」の話を聞いていたから、
すぐさま拳銃がイメージされてしまって、
ジャマイカ初夜からびびりまくり。

今、STUDIO ONE STORYのDVDを見返してみてたけど、
KINGSTONも結構のどかに写ってるから、
すべてがすべて「ガンポイント」じゃないとは思うけど。
(Coxson Doddが2005年の5月5日に心臓発作で亡くなっていたのはショック!)

まぁとにかく
クリスマスイブの夜は
過敏に反応してしまったので
そのままお開きってことに。

それにしても
トレンチタウンの現状、
昼間にもう一度観察してみたかった。
(結局、これ以降ダウンタウンにも行けず終い)