
学生時代の話だ。
Jazz喫茶「Meg」で一緒に働いていた
Vocal志望の女の子に連れられて
はじめて六本木のAlfieへ行った。
まだオーナーの日野元彦さんが健在だった頃だ。
たしか伊藤君子さんのライブだったように思う。
セカンドステージでは元彦さんが元気いっぱいにドラムを叩いた。
Vocal志望の女の子は、かなり酔っぱらっていて、
女王様気分で、生Jazz初体験のボクをいじり回しては、ケラケラと声高に笑っていた。
「Jazz喫茶で陰気にレコードばっかり聴いてるから、わからないのよ。
ナマのエロスをもっと感じなさい!ほら、この音を飲み込みなさい!」
ほとんど、ワケが分からない領域に達していた。
実際、その女の子はロレツも回らない状況で、
背広姿の客からひんしゅくを買っていた。
しかし、生で初めて聴くJazzは、強烈な体験だった。
女の子の言うとおりだ…エロスが充満している。
ドラム・ベース・ピアノ・ヴォーカル…それぞれの人生模様が
音となって激しくせめぎ合っていた。
その駆け引きが、学生のボクには消化不良なほど、エロスに漲っていた。
ビール一杯でひたすらどぎまぎしているボクを尻目に
女王様になった女の子は、不敵な笑いを浮かべている。
しかし、テリトリー外で萎縮してしまったボクは、
愛想笑いすら返すことができない。
女の子はエロスの実習でも施すかのように
タチの悪いInvitationを送ってよこしたが、
こちらはただもう、息をするのがやっとの状態。
チェリーボーイよろしく、その場を立ち去ってしまった。
六本木アルフィー