【転機】NAHAマラソン その4


午前9時のカウントダウンとともに
「万国津梁の鐘」がぐわーんと鳴った。

58号線に埋め尽くされた
3万人のジョガーが一斉にスタート!

…できるわけがない。

最後尾までおよそ何キロあるのだろう。
30分以上経って、やっと全員がStartingPointを抜けた。

そういった不公平さを納得させる意味でも
ゼッケン番号順に並ぶよう指示はしているようだ。

集合時間も8時10分になってるし、
こうやってプラカードを掲げて
事前に整列するよう呼びかけてもいるのだけど、

目の前を通り抜けるLoads of peopleのゼッケンは見事にバラバラだ。

面白いくらい、混じりあっている。
3桁と4桁と5桁が肩を並べて走っている。
このてーげーさが沖縄の場合、必要なのだろう。

      ●

12月09日(火)
昨日よりは過ごしやすい一日。

ジャマイカ行きはすでに進行していた。

彩のジャマイカ生活日々徒然「ジャマイカの犯罪」

ジャマイカでお世話になる彩さんのブログを読む。
物価高で犯罪が凶悪化しているらしい。

「ガンポイント」といって
一般人や観光客を相手にガンを向け
すべてを奪っていく犯罪が増えていると…。

チャックフェンダーって人が
そんなジャマイカの犯罪を曲にして大ヒット!
しかし、ラジオで放送禁止に。

「What!?」そんな社会の歪みを嘆いた本人のメッセージ。(以下転用)

 Gash Demみたいな曲は、本当だったら一日に20回ラジオでかかってもおかしくないような曲だから、
 放送禁止になって悲しかった。罪の無い赤ん坊を撃ち殺したり、子供をレイプしたりする奴らは、社会の悪疫だ。

 あの曲は、そういう寄生虫みたいな奴らの心に入っていって、
 自らの罪に気づいて自殺しようと思わせるくらいのパワーが込められてるんだ。
 罪の無い子供や女や老人を傷つける奴らは、この世からいなくなるべきだ。

  「 全能の神よ、邪悪な行いをした奴らにガスをかけて火をつけろ」

 というのはラジオでかけられないのに、今日もラジオからはガンチューンが流れ続けている。
 社会を正そうとする歌が間違っていて、悪を賞賛するメディア。
 こういう行いに隠されてるメッセージを、読み取ることが大事だ。

 放送禁止になっても、ナンバーワンになった。

 聞いた人たちは同感してたってことの証明だよ。
 ジャマイカのシステムの本音は、本当には、人々に良くなって欲しくないってこと。
 若者たちのマインドをクリーンアップしたいなんて言ってるけど、
 結局毎日ラジオからは、若者を悪に導く音楽ばかりが流れてる。

 音楽は血の中に入っていくもの。
 絶望に満ちた若者がガンチューンを聞いたらどうなる?マッドになって、ガンを持つようになるんだ。
 社会が良くなるわけがない。ジャマイカがひとつになると不都合な奴らがいるんだ。
 すべてビジネスだよ。人々を分離することでリッチになってる奴らがいる。

      ●

ジャマイカの日常が、少しだけ見えてきた。

【転機】NAHAマラソン その3


「我那覇和樹」が手を差し伸べている。

彼も今、川崎フロンターレに戦力外通告され、
10年間の古巣から飛び立とうとしている。

周りを囲むファンが声をかける。
「和樹、がんばれ!」

   状況がダブる。

      ●

金曜日に「レゲリーマン」から着信があった。

年末にジャマイカで録音をするんだけど、
「レゲっ娘」のプロデュースも兼ねてるので
カメラマンとして同行しないか…と。

出発は23日の夕方。
帰国は年明け2日だという。

あと2週間しかない。

結論を出すなら、今すぐ。
無茶な話だとはわかっているが、
この好機を逃したら、萎んでしまいそうな気がした。

まさに「手を差し伸べられた」気分だ。

しかし、すでに年末年始は
予定をみっちり入れてしまっている。

すべてをキャンセルして、
ジャマイカへ飛ぶか。

「月曜まで、時間をください。」
…そう告げながらも、すでに気持ちは
 ジャマイカにあった。

興奮していた。

夢にまで見たレゲエの島。
猥雑な2ビートの島。

Bob Marleyの島、Skatalitesの島だ。
今まで行けなかったのが、信じられないくらい、
…ボクはこの島の音楽に薫陶を受けていた。

写真家のスタートとして、
これ以上のお膳立てがあるだろうか。

何もためらうことなく、
勇んで進むべきじゃないか。

【転機】は突然、訪れる。

【転機】NAHAマラソン その2


スタート地点の58号線に
3万人ものジョガーが並ぶ。

NAHAマラソン、1万8654人完走(毎日jp)

人酔いしそうな人数だ。

マラソンのスタート以外で
これだけの人間が道路上に溢れることが
果たしてあるだろうか?

まもなく9時。

那覇市長がスタート前のあいさつを
浪々と語っている。

2008年に活躍したうちなーんちゅの代表、
「我那覇和樹」と「大城みさき」が市長の傍らで
スタート合図となる「万国津梁の鐘」を鳴らさんと
待ち構えていた。

「我那覇和樹」を目当てに
ケータイカメラの群衆が押し寄せる。

「和樹」が、振りかえる。

群衆のフラッシュが一斉に焚かれる。
嬌声が飛ぶ。人気者だ。
手をさしのべて、握手を求める者。
「和樹」がさらに応える。

      ●

 「和樹」と同じように
  手をさしのべた人物が、いた。

【転機】は金曜日に起こった。

  

【転機】NAHAマラソン その1


12月7日。快晴。
しかし、風が冷たい。

東京から毎年「NAHAマラソン」にエントリーしている
高校時代からの友人が、今年も参加。
土曜日はうちに泊まった。

朝7時15分、
会場までクルマで向かう。
ゼッケンの交換がまだ済んでいない。

武道館にてゼッケンを受け取り、
奥武山運動公園内を巡る。
実は、今回はじめて会場入りする。

ジョガーの祭典とはよく言ったものだ。

応援する人間も合わせると
4万人近くの人間が
「マラソン」という同じ目的で集合している。

スタートまで
まだ1時間ほど余裕があるが
太陽のエネルギーも手伝ってか
人々はみな高揚していた。

トイレ待ちも相当な列となっている。
そのヨコでは、朝飯をほおばる人。
排泄と供給が同居していた。

Frank Gordon@Cafe di Porto


12月1日夜、
Frank Gordon
ライブを観る。

2005年から沖縄に移り住んだ
由緒正しきハードバッパーだ。

今年で70歳。

どんなおじいさんが登場するのかと思いきや、
シャキッと背筋の伸びたステキな黒人さん。

ていねいにお辞儀をして
英語であいさつ。

ステージの目の前に陣取って
トランペットのベルが目と鼻の先。

カウントとともに
Jazzのスタンダードが始まった。

…息を呑む瞬間だった。

トランペットのストレートな音色が
ダイレクトに入ってくる。

いぶし銀の味わい深い音とフレーズ。
なめらかなリップスラー。

16歳から演奏を積み重ねてきた経験が
インプロビゼーションの中から湧き上がってくる。

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やはり、シンプルだ。

このように生きたい!

70という年輪を重ねながら
20代のバックバンドに支えられ、
お互いに敬意を払って
最高の演奏へと導く空気感。

その真摯な姿勢が、気持ちいい。

フリューゲルホーンがまた深い!
「Body&Soul」の旋律が心の奥まで
ぐぐぐぐぐ…っと、迫ってくる!

それはそれは至福の時間だった。

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逆光の中で
ろうろうと演奏するMr.Gordon。
…まぶしかった。

この逆光を、カタチにしたい。
…そう思っていたら、

夜中のNHKで、
平間至がジャケット撮影の極意を語っていた。

テレ遊び「パフォー!」

「音の聞こえる写真」…それがジャケ写の真髄。

なるほど。

逆光に映えるトランペット。
あのいぶし銀を鳴らせることが出来るか。

【感慨】12月になった…


12月1日。快晴。
柔らかな光はポートレイト日和。

そんな気持ちになれるのも
心がシフトした証拠かもしれない。

今日は朝から、会社の朝礼があった。

今月の動きを手短に報告する場。
年末にむけての慌ただしいタスクが
それぞれの口から発表される。

…ひとり感慨に浸っている。

このような社会集団との連携も
少し縁遠くなるんだな。

窓から差し込む光をじっとみつめ、
これからはこの光が相手だ…と
勝手に悦に入ってる。

あと3週間。

身辺整理をしながら、
退職のごあいさつも済ませ、
徐々に徐々に自分を追い込んでいく。

しかし、気持ちは今日の空のように晴れやかだ。

来年は40歳。
マラソンでいえば折り返し後の
なだらかな上り坂…といった感じだろうか?

30キロを過ぎたあたりから
急激にカラダが疲弊し、継続が苦しくなる…らしい。

そんなタイミングで
走行スタイルを変えよう…だなんて
かなりの冒険かもしれない。

とはいえ、今更走ってきた道程を否定し
リセットするわけにもいかないだろう。

残された距離を
自分らしく完走する。

それが今、できること。

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この10年間かかわった方々から
いろいろと励ましの連絡を受ける。

「あらたな道のりへ踏み出すそのエネルギーを大切に!」

心、突き動かされた。

そうそう、このチャレンジするエネルギー。
これが今の自分には宝物。
なんとかこの動力に薪をつっこみ、
炎を大きくしていきたい。

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まずは同時代の連中と
顔付き合わせて、話をしよう。
彼らが感じる今を、写真に焼き付けたい。

それが、自分に課した命題だ。