大道の9年間 その2~大道小学校~

ボクの青春「高円寺」と
イメージがダブるもうひとつの場所…
それが「大道小学校」だ。

「高円寺」時代は、
眼と鼻の先に「馬橋小学校」があった。
弟は、その小学校を卒業している。

朝は早くから野球の練習が行われ、
校内アナウンスが高らかに響く。

運動会の季節になると、毎日毎日、
朝からブラスバンドの練習が大音量で聞こえてくる。

夕方には、帰宅を促す「ほたるの光」が、
西日独特の湿った空気とともに入り込んでくる。

夜には、どこから集まってくるのか
悪ガキどもが車座になってひそひそ話をしている。

そんな学校の風情が、
ボクには、タマラナイ。

なぜだろう?
なぜだか、わからない。
学校を取り巻く、
そのゆるやかな空気が
おそらく好きなんだ…と思う。

大道の9年間 その1~栄町市場~


あさっての土曜日に、いよいよここ栄町に別れを告げる。
那覇市大道「栄町」に、まる9年間。
義務教育の9年間をここ栄町で過ごしたと考えると、大変感慨深い。

…沖縄に来て、もう10年が経とうとしている。

いつまでたっても「客人」としての自分がいる。
最終的には、やはり沖縄に「心酔」していない自分に気づく。

そもそも、ここ「栄町」に住まいを決めた理由は簡単だ。
この「栄町市場」に惚れ込んだからだ。
迷路のように入り組んだアーケード街が、
かつての住まい「高円寺」を思い起こさせた。

「高円寺」はまさしくボクの青春である。
中学2年から大学卒業、社会人3年までの
12年間を過ごした場所である。

そんな思い出の地「高円寺」とここ「栄町」を重ね合わせていた9年前。
ボクは沖縄の地に、血湧き肉躍るかつての青春を求めていたのか?

振り返ってみると、沖縄の9年間はまさに青春だった…と思う。
最果ての地、南国の地、スカイブルーの海、照り注ぐ太陽…。
うだる暑さ、潮風にべたつく肌、キチガイみたいな夕焼け…。

何をとっても新鮮だった。

毎日、毎日が嬉々とした驚きにあふれていた。

朝は早くから西海岸を北上し、
青い空と青い海をまぶしく思いながら、
今までの経験を生かした仕事をこなし、

夜はおそくまで酒を飲み、
時には異国情緒あふれるオキナワ女をくどき、
毎日ヘベレケになりながらも充足していた。

学生時代に戻ったような
自己発現の毎日だった。

東京、仙台の修業時代が色あせて見えた。

オキナワの地が、ボクを再生した…と言っても過言ではない。

「人生いろいろ、時間は前にしか進まない」


引っ越し作業を進めていくと、思いもかけない過去に巡りあったりする。

…昔読みふけった哲学書。
…出会った感動を記した日記。
…仮装パーティの恥ずかしい写真。
…永遠に葬り去られた往復書簡。

すべてが、ボクの過去。ボクの時間だ。

その時の流れに呆然と立ち尽くす。
あれから5年、10年、15年…。
振り返ってみると、
貴重な持ち時間が、すでにこれだけ消化されている。

      
     ……。

すべてを飲み込んで、プールへ。

何も考えずにカラダを動かす。
ナツの強烈な陽差しが水の揺らぎをとらえ、
光の陽と陰を、まざまざと見せつける。

カラダを浮力にまかせ、漂わせてみる。
詰め込んだ記憶も、…いっしょに漂わせてみる。
水面に乱反射する光、…呼応して乱反射する記憶。

このまま自身を分解して、プールに溶け込ませたい…。
この水に溶け込ませ、…そのまま永遠に留まりたい。

     ……。

気持ちよい脱力感を伴って、プールを出る。
バラバラとなった記憶は、血肉化され、昇華されていた。

「人生いろいろ、時間は前にしか進まない」

わかったような台詞を吐いて、
大手を振って外に出る。

強烈なナツの陽射しが、視界を真っ白にした。

ドキュメンタリー写真の心得 by 大森克己


      ●
      まずカメラを持つ前に、何故、何のために写真を撮るか
      よく考えましょう。写真を撮ることには、大きな覚悟が必要です。
      …各自黙想すること…よろしいですか?では始めましょう。
      ●
      まず、正面に立つ。よく見る。
      もっと近くによる。細部に注意をはらう。
      そして引いて見てみる。もっと引いて見る。
      タテ位置は断定。ヨコ位置は客観。
      ●
      音や匂いにまどわされない。
      センスだの感覚だの生意気なことを言うな。
      とにかくたくさん撮れ。
      ●
      被写体の気持ちを考えろ。
      そして裏切ることを忘れるな。
      絶交を覚悟せよ。
      独りになれ。
      現在の自分というものを簡単に信じるな。
      しょせんあなたの理解はあなたを越えられない。
      世界はあなたの友達ではない。
      直観は大切だ。
      ことばで説明できることは写真に撮るな。
      未来の記憶を思いだせ。
      そして世の中には写真に写らないものがたくさんある。
      ●

ちょうど1年前の七夕の日、ボクは「大森克己ワークショップ」に参加していた。
全12回、6ヶ月におよぶ長いスパンだ。
講師は写真家・大森克己さんと
ディレクター・町口覚さん、キューレター・金谷仁美さん。
受講生は全14名。北は山形から南は沖縄までの人間が、この東京に集まった。
皆、大森克己の写真に惚れ込み、応募してきた写真家志望の連中だった。

あれから1年が経ってしまった。
「ドキュメンタリー写真の心得」も未だ習得できないでいる。
これを読むたびに大森さんの鋭い眼光がよみがえる。
町口さんの無言の批評に恐れおののく。
6ヶ月を共にした受講生はみなどうしているのだろう。
同じように背筋を伸ばして、この「心得」と対峙しているのだろうか?

写真のなんたるかを体得できないまま、
「とにかくたくさん撮れ」の言葉だけ鵜呑みにして行動する。
突き動かされる視覚を客観的に判断しつつ、シャッターを押す。
再編して集約して、「世の中には写真に写らないものがたくさんある」と
反芻しながら、大森克己に近づこうともがいている。

今年もあと6ヶ月。
去年の自分を研ぎ澄まそうと、奮起を誓う。

大森克己
町口覚
ギルドギャラリー

台風の日に引っ越しの準備


今、外はびゅーびゅーの大荒れだ。
沖縄に今年初の台風到来。
本格的な夏が始まる。

昨日は、イギリス人の友だちJaimeが東京からやってきて
カポエイラを披露するBrazilianNightがあったので、
夜中の3時まで夜更かししてしまった。

七夕の日に入籍したEarth Dog Cafeのおふたりを
祝福するイベントでもあったので、挨拶に顔を出した。
だんなさんのご両親がイカしていて、ステキだった。

あらためて、おめでとう。

そんなこんなの週末、ぼくたちは引っ越しの手配で奔走している。
長年住み慣れたここ、大道のアパートを引き払い、
那覇の新都心と呼ばれる「おもろまち」に転居するのだ。

引っ越しは来週で確定。

今日は不動産に契約書と契約金を支払ってきた。
これで手続きは終了。
あとは、9年間に積もった澱をすこしずつ整理する作業だ。

こんな暑くて風の強い日に、
ぼくは埃まみれで格闘している。

EarthDogCafe

嫌われ松子の一生


あの中島哲也が描く「不幸な女のシンデレラストーリー」だ。
CM制作で培われた秒刻みの映像展開とCGを駆使した演出で
ディズニーのミュージカル映画よろしく、畳み掛けてくる。

息つく暇もない。…圧倒されてしまった。

そして、感動した。…涙が出た。

       ●

松子は自分にまっすぐ生きた。
不器用に、一途に、自分の感覚を信じ、突き進む。
乗り越えていかなきゃ…と
どんな不幸な状況でも、健気に振る舞う。

自分が招いた結果だ…と内省的に考えず、
とにかく前を向いて生きている。

       ●

まげて のばして お星さまをつかもう
まげて 背のびして お空にとどこう

小さく まるめて 風とお話ししよう
大きく ひろげて お日さまをあびよう

みんな さよなら
またあしたあおう

まげて のばして おなかがすいたら帰ろう
歌を うたって おうちに帰ろう

       ●

とてつもなく不幸な話なのに、
なんでこんなに元気になるんだろう。

…そんな疑問がわいた。だから、自分に置き換えて考えてみた。

まわりの顔色を伺ってばかりいるからじゃないか?
いつの間にかよけいな肉がついて、体も心も重たくなってるからじゃないか?

それでも予定調和に流されて、自分を押し殺したりしてるからじゃないのか?
ブルーハーツの歌に合わせて飛び跳ねていたあの頃は、もっとシンプルだったんじゃないのか?

       ●

…そうか、松子はえらくシンプルだ。
周りが見えないほどシンプルで、だから傷つけもし、傷つけられもする。

もっと削ぎ落としてみても、いいんじゃないか?
自分自身をシンプルにしてみたら、もしかしたら見えてくるんじゃないか?

…やっぱり、そうなのか。
中島哲也もシンプルだもんなあ。
Simple is BEST! シンプルは強し。

夕涼みにバリダンスその1


木曜日の夜にケータイメールが届いた。
大学時代の友人からだった。

「那覇に踊りの仕事で来ています。あさって本番です。」

彼女は大学卒業後バリダンスに魅せられ、バリ島にまで移住し、踊りを極めていた。
電話してみると、沖縄県立芸大の中庭でガムランと共演する…という。

さっそく土曜日に顔を出してみた。
午後7時。芸大教授が主宰する「ガムラン演奏会」が始まった。

 陽が落ちて、気持ちよい風が頬をなでる。
 バリの音楽が、オキナワの夕暮れに満ちる。
 なんとも幸せな混淆のひととき。
 
 …数年前の感覚がよみがえる。

 バリ島のウブドでは、夕暮れとともに至る所でガムランが演奏された。
 まさにトランス状態で音楽に身を投じ、悦に入った。
 至福の時だった。いや、バリはすべてが至福だった。

そんな陶酔に浸りつつ観た彼女の踊りは、優雅だった。
目をカッと見開き、ピンと指先を立て、ほどよい緊張感を感じさせながらも、
全体の雰囲気は非常にゆるやかで、丸みを帯びていたように思う。

まさかオキナワで、このような異国情緒を味わえるとは…。
空が青みを深め、徐々に夜の気配が近づくと、
照明に浮き上がった踊り手たちは、さらに妖しく艶やかに映った。

バリに行きたい…。またあの至福を味わいたい…。
思わず現実逃避した土曜の夜だった。

 

【事故】今年一番の夏日で…フィルムがオジャン!


週明けの月曜日、オキナワは34度を記録する暑さに。
九州地方の梅雨前線が強力なだけに、オキナワを覆う高気圧も強大ならしい。

おかげさまで、ラボに出したフィルムがこのありさま。

左右を横断する線はフィルムについた傷である。
現像途中でブレイカーが落ちてしまい、現像機がストップ。
すぐに復旧するも、現像途中のフィルムが巻き込まれてしまい、
見事なカタチでぐちゃぐちゃと折れ曲がってしまった。

暑さのためにクーラーをフル回転させていたらしい。

幸いにも、現像⇒停止⇒定着まで進んでいたので画像は確認できるが、
乾燥途中のシャットダウンで生乾きのフィルムが悲惨な状態に…。

犠牲になった写真は
沖縄県立芸大の中庭で行われた貴重な「ガムラン演奏会」の記録だった。