
引っ越し作業を進めていくと、思いもかけない過去に巡りあったりする。
…昔読みふけった哲学書。
…出会った感動を記した日記。
…仮装パーティの恥ずかしい写真。
…永遠に葬り去られた往復書簡。
すべてが、ボクの過去。ボクの時間だ。
その時の流れに呆然と立ち尽くす。
あれから5年、10年、15年…。
振り返ってみると、
貴重な持ち時間が、すでにこれだけ消化されている。
……。
すべてを飲み込んで、プールへ。
何も考えずにカラダを動かす。
ナツの強烈な陽差しが水の揺らぎをとらえ、
光の陽と陰を、まざまざと見せつける。
カラダを浮力にまかせ、漂わせてみる。
詰め込んだ記憶も、…いっしょに漂わせてみる。
水面に乱反射する光、…呼応して乱反射する記憶。
このまま自身を分解して、プールに溶け込ませたい…。
この水に溶け込ませ、…そのまま永遠に留まりたい。
……。
気持ちよい脱力感を伴って、プールを出る。
バラバラとなった記憶は、血肉化され、昇華されていた。
「人生いろいろ、時間は前にしか進まない」
わかったような台詞を吐いて、
大手を振って外に出る。
強烈なナツの陽射しが、視界を真っ白にした。