無題/浅川マキ



雨かしら
ビルとビルの間に灯る
橙色のかすかな灯りが
窓に映えてる
そろそろ眠ろうかな

スキャンダルめいたものが
黄色のカーテンをひくと
雨で軟らかになった都会が死にかけている
春雨が静かに降っている
女はなぜ傘を閉じたままにしているか
ヴァイオリンのように軋む階段の下で

まだ眠っちゃだめ
あたしより先に

秘密の足取りで忍び込んだ猫
猫、彼は突然そこにいた
坐れば坐り
蹴られば蹴られたままでいる
気の進まぬ天使のように
「ウィンクのように」
未知の言葉を喋りながら
不意にわたしに寄り添うのか
猫の秘密の足取り
残酷なポーノグラフィよ。

降り出した雨
少し強くなったみたい
眠ろうかな
今夜は
そろそろ眠ろうかな