
バタンガスからホワイトビーチまでの2時間、
バンカーボートと呼ばれる両舷に支えのついた舟で航海する。
幌はついているものの、両脇から波しぶきが
ビシャー、ビシャーと入ってくるから、たまらない。
波のうねりを直に受けるから、
乗り心地も最高に悪い。
おまけに2時間の長旅…。
まわりは異国の人ばかり。
この時は韓国人のツアー客が
ドドドドっと乗り込んできたので
飛び交う言葉はハングル語。
モーターの爆音と波しぶきで聴覚が完全に奪われて、
うねりで平衡感覚も危うい状態だから、
いつ吐いてもおかしくないな…と思っていたら、
突然、前方の中国人がゲエイゲエイやり始めた。
…おお。
視界をよそへ移して
平静を装う。
すると、右側に座っていたイスラム系の男の子も
…ゲエイゲエエイ。…なんと鮮やかなピンクの吐瀉物。
…何を食べたら、そんな色になるんだ…。
…うっ、おおっ。
これは効いた。胸倉を回遊する吐き気に襲われる。
…上空を仰ぐ。目をつぶってはいけない。一挙にうねりと同化してしまう。
…と、左を見ると、妻が顔面蒼白になっている。
言わんこっちゃない。…すぐさまビニール袋を口元に。
…ゲエイゲエエイ。背中をさすりながら、楽になることを願う。
…。
その後、うねりは収まり、
なんとか航海は乗り切った。
港に上がって感じるコンクリートの堅さが、うれしかった。
…なんだかんだ言っても、これも旅の醍醐味。