
私はその光の中でぼろぼろと涙を流しました。
体じゅうの体液が涙となって、
私の目からこぼれ落ちてしまいそうに思いました。
私のからだそのものが溶けて液体になってそのままここに流れてしまいそうにさえ思いました。
この見事な光の至福の中でなら死んでもいいと思いました。
いや、死にたいとさえ私は思いました。
そこにあるのは、今何かがここで見事にひとつになったという感覚でした。
圧倒的なまでの一体感です。
そうだ、人生の真の意義とはこの何十秒かだけ続く光の中に存在するのだ、
ここで自分はこのまま死んでしまうべきなのだと私は思いました。
(村上春樹『ねじまき鳥クロニクル』間宮中尉の長い話)