
なにもかも失って
言葉まで失ったが
言葉は壊れなかった
流されなかった
ひとりひとりの心の底で
言葉は発芽する
ガレキの下の大地から
昔ながらの訛り
走り書きの文字
途切れがちな意味
言い古された言葉が
苦しみゆえに甦る
哀しみゆえに深まる
新たな意味へと
沈黙に裏打ちされて
◎
谷川俊太郎
朝日新聞「5月の詩」から。
◎
陸前高田の現場に降り立ってみて
そのガレキの盛り上がった町並みに
言葉を失ったのだけど、
そこで悲惨だ…と突き放すのではなく、
寄り添うように努めた。
これがボクの愛する町だったら、
どんな気持ちで眺めるのだろう…と。
そうすると、ガレキのひとつひとつが
とてもいとおしく思えるようになれた。
ひとつひとつに思い出が詰まってる…そう思った。
だから、ひとつひとつの思いを摘み取るように
シャッターを押そうと思った。