
5月10日。連休明け最初の月曜日。
雨の気配をそこはかとなく感じさせる曇り空。
朝からベタつく湿気に同僚のおばちゃんも
「朝から暑いわね、ホント」
と剥がれ落ちそうな厚化粧越しに笑顔。
こちらも、すかさず笑顔。ニッ。
ビル清掃にもゆるやかな人間関係がある。
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一日中、悶々と企画の骨子にアタマを占有される。
「自分にとっての原点回帰とは?」
月末までにまとめる企画書のガイドライン。
はて、今のコドモたちには反抗期ってあるんだろうか?
原点に立ち返って、ふとそんなことを考える。
反抗すること、それは自分の思考がひとつの思想を帯びる時。
自我のめざめのとき。
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転校生だったボクは、周りに自分を合わせることで
社会との帳尻を合わせていたのだけれど、
中学2年生の冬、友だちから借りたレコードのおかげで、
ある種の恍惚と戦慄がカラダ中を巡り、自己にめざめる。
…というほど、完成された自己は持っていなかったのだけど。
Motley Crue
1981年デビューのLA出身のハードロックバンド。当時ボクは12歳。
世の中は横浜銀蝿となめネコが席巻していた時代。
一触即発のフラストレーションが社会を取り巻いていたのか、
なんとなく刺々しいモードが「時代の空気」だったのか、
片や松田聖子やたのきんトリオらアイドルがTVを賑わしていただけに、
すべてにおいてアンチな存在である…長髪男の彼らにボクは心底魅了されるのだった。
忌野清志郎が「いけないルージュマジック」でショッキングなキスシーンを見せたのは1982年。
男がルージュをつけてブロンドの長い髪を振り乱し、sexやviolenceを歌っている絵は、
常識ある家庭には、タブーのすべてを詰め込んだような破廉恥極まりないものだったに違いないのだけれど、
だからこそ、いままで型にはまることを良しとしていた転校生のボクにとっては、
「生きる歓び」がそこには詰まっているように見えたのだろう、一瞬にして虜となり、
崖を転げ落ちるかのように、ハードロックやヘビィメタルにのめり込んでゆく。
でも、あのときの恍惚や戦慄がなかったら、
ボクは今のボクではありえないし、
感動で心振るわせるほどの感性を持ち合わせてもいなかっただろう。
今でもMotley Crueを聴くと、馬鹿みたいに感性剥き出しだった
あの時代の自分が顔を出す。
あの時期の多感な自分に、今のボクは何を提示できるのだろう…。
ワケもわからず中指をおっ立てた無垢な自分に。