
君を夢見たことはない
Eu nunca sonhei com você
今まで映画を観た事がない
Nunca fui ao cinema
サンバは好きじゃないし イパネマには行かない
Não gosto de samba não vou a Ipanema
雨降りは好きじゃないし 太陽も気にいらない
Não gosto de chuva nem gosto de sol
君に電話したことはないし 僕の知るかぎりでは試したことがない
E quando eu lhe telefonei, desliguei foi engano
わざわざ恋なんて愚かなこと
O seu nome não sei
しようと思ったこともない
Esquecí no piano as bobagens de amor
誰かが君に告げるようにはね
Que eu iria dizer, não … Lígia Lígia
穏やかな昼下がり
Eu nunca quis tê-la ao meu lado
手を繋ぎ君と出掛ける
Num fim de semana
コパカバーナのバーで冷えたビールを
Um chopp gelado em Copacabana
レブロンまで海辺を歩く
Andar pela praia até o Leblon
僕は夢中になったことはない これまでも
E quando eu me apaixonei
君と結婚するかもしれないなんて
Não passou de ilusão, o seu nome rasguei
避けられない問題として 僕はひどい痛みに苛まれることになるだろう
Fiz um samba canção das mentiras de amor
最後に君を失うから
Que aprendí com você É … Lígia Lígia
僕は苦しむことになる
最後に君を失う酷い痛みに
Lyric by Chico Buarque
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2月6日、土曜日。
肌寒くも陽光が心地よく差し込む朝。
昨日は東京ビッグサイトで展示会撤去のバイト。
ここは冷凍庫か…と思うような、凍てつく潮風が吹きすさぶ。
カラダの芯まで冷たくなって、
ひもじい気持ちで新木場の駅から自転車で帰る。
夜中の明治通り、静まりかえった夢の島の倉庫地帯。
凍えた不惑のオトコの背中に、追い討ちの夜風の洗礼。
…世間は容赦ない。
せめて心だけでもあったまろうと
ipodでお気に入りのトランペッター五十嵐一生を聴く。
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流れてきたのは「LIGIA」。
アントニオ・カルロス・ジョビン+シコ・ブアルキの名曲。
シーンとした国道で、ボクの耳からミュートの音が漏れる。
♪穏やかな昼下がり 手を繋ぎ君と出掛ける
コパカバーナのバーで冷えたビールを レブロンまで海辺を歩く
頭の中にブラジルの陽差しが差し込んでくる…。
南国の甘い旋律、君との恋…。そよ風に揺れる椰子の木。
片手にはビールの小瓶…甘い香りがただようビーチで、
手をつないで、そぞろ歩き。
「…あああ、そうだった。」
寒空の下で、南国の記憶をひもとく。
イギリス人の友だちは今頃、
ブラジルの光の中、
カポエイラのリズムに身体を撓らせているだろう。
…トロっと、涙が心の中であふれる。
違和感とか異和感とか、言葉を紡いで
いろいろ考えをまとめようとしていたけど、
そうなんだよ、この充足の時…。
太陽に溶け込むような、地球との一体感。
音楽の旋律ひとつで、こんなにも呼応しあえる。
…ああ、がんばろう…。
この一瞬の至福のときを求めて、
ボクは呼吸し、生きている。
Jobim、すばらしいよ、あなたは。