【2010】明珠は掌に在り(1)


1月4日。月曜日。
2010年の幕開けだ。
仕事初めの輩も多いことだろう。

宝島社2010年の企業広告が今日、掲載されていた。

「日本はうまくいく。と思うことから、日本はうまくいく。」
ネガティブに否定ばかりしてないで、いいところを伸ばしていこうよ…というメッセージ。
毎年、宝島社の企業広告は、はっとさせられる。

そしたら、同じ紙面にアレックス・カー氏が進める
長崎県小値賀島の「古民家再生プロジェクト」の話が出ていた。

徳島県東祖谷山村にある
築300年の茅葺き屋根の古民家篪庵(ちいおりあん)に惚れ込み、自ら改修し、
NPOを立ち上げ、日本文化の礎としてメッセージを発信しているアメリカ人が、
新たに興した古民家再生プロジェクト。

篪庵(ちいおりあん)の存在は「翼の王国」などのメディアにも紹介され知っていたが、
今度は小値賀島か…と驚嘆するとともに、宝島社の発しているメッセージにリンクするなぁ…と感嘆した。

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明珠在掌(みょうじゅたなごころにあり)。
You have a treasure in your hands by nature.

アレックス氏が座右の銘とするこの禅語は、
「輝く宝は手の中にある」といった意味で、
…自らを省みれば必ずオンリーワンな要素が存在するから、
 しっかり自分をみつめなさい…とよく坊さんの説法に使われる。

説法で聴くと居心地の悪い内容でも、
こうやって30段広告で大々的にメッセージされると、
「だよな。」と納得させられるのだけど、

思えばボクが沖縄で広告業界から足を洗うきっかけになったのも
この禅語「明珠在掌」みたいなもんだな…と振り返る。

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2007年に地元オリオンビールの主力商品ドラフトビールを
根本から立ち直すブランディングの仕事を任された時、
コピーライターやプランナーとこのブランドの「オンリーワン」を話し合った。

1950年から飲み継がれている県民ビールの大衆性を
「生活、ビール。」というキャッチコピーで新たな光を当てようと
企てた戦略は、担当者に一笑され、わずか2ヶ月で潰えた。

しかし今でもあのときのプランニングは間違ってなかった…と自負する。

山之口獏氏の詩をぶつけて、ブランドの根元を見直す切り口は
「沖縄」の居心地の良さを言い当てていたし、
そこに根差すドラフトの大衆性+県民性に光を当て、
「沖縄」のアイデンティティを再評価するものになったはずだった。

残念ながら、ドラフトのブランディングは「消費経済」の理に呑み込まれ、
「販促」という大義名分に迎合するカタチで閉じられた。

その時、常に前へ前へと触手を伸ばすことを正義とする「広告」の姿に疲れてしまった。
それは現在の日本が抱える「消費経済の疲弊」と相似形を成していたように思う。