【Raymond Carver】解剖室


その頃、わたしは若かったし、人並み以上に強かった。
どんなことでも、と自分では思っていた。
夜、アルバイトで、検屍のすんだ後の解剖室を掃除していた。
解剖がすごく早く終わることもあれば、
ずいぶん遅くまでかかったりすることもあった。
そうすると、なんと、あの特別にしつらえられた台の上に
残骸が放置されていたりするのだ。
コチコチに冷たくなった赤ん坊。
ある時は、黒人の大男。白髪のやつで、胸が切り開かれていた。
内蔵がすべて頭の横の金属皿の上に並べられている。
ホースから水が流れ、頭上からはライトが照りつけていた。
またある時は、脚が置いてあった。女性の脚が台の上に。
青白い格好のいい脚。わたしは、自分の見ているものが何であるか、
ちゃんとわかっていた。前に何度も見たことがある。
それでもなお、はっと息を飲んでしまうのだ。

夜、家に帰ると妻がこう言う。
「大丈夫よ。この世が終わればあの世がある」
だが、それほど単純にわりきれない。
妻はわたしの手をとって、両手でしっかり握りしめた。
わたしはソファーにもたれて目をとじた。
何かを…考えながら。
何を考えていたのかわからない。
妻がわたしの手を自分の胸に持っていく。
その時、わたしは目をあけて、天井を見る。
あるいは床をじっと見つめる。
それからわたしの指は彼女の脚へ。
温かく、格好のよい、
かすかに触れただけで震えだし、びくっとする脚。
だが、わたしの心は晴れず、落ち着かない。
何も起こってないのに、
いろんなことが起こっていた。
研ぎすまされ、どんどん尖っていく石……生命とはそんなものか。

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トムウェイツを聴いて、カヴァーが読みたくなった。