
「夕焼け」 原詩=吉野弘 曲=高田渡
いつものこと
電車は満員
そして いつものこと
若者が坐り
年寄りが 立っていた
うつむいていた娘
年寄りに席をゆずる
礼もいわずに 年寄りは
次の駅で降りた
娘は坐った が
また 別の年寄りが
娘の前に 娘の前に
娘はうつむいた が また
年寄りに席をゆずる
年寄りは礼をいって
次の駅で降りた
娘は坐った
二度あることは三度という通り別の年寄りが
娘の前に
娘の前に
かわいそうに娘
うつむいて うつむいたまま
席をゆずらず
次の駅も
次の駅も
口唇をかみしめ
つらい気持ちで
娘はどこまで
どこまで行くのだろう
口唇をかみしめ
つらい気持ちで
やさしい心に責められながら
美しい夕焼けもみないで
口唇をかみしめ
つらい気持ちで
美しい夕焼けもみないで
●
きっと、夕焼けはいつのまにか
深い青へと入れ替わり、
車内の明かりがガラスに反射して、
さびしげな送電塔がシルエットで浮かんでたり
…したのだろう。
ボクもこんな心象風景を
心に刻んでいる。
列車の規則的なリズムと、
行き場のない制止した空間。
巡る思い。
過ぎ去る風景。
「ボクらは、どこに行くのだろう」
…そんなことをボーッと考えていた。
くく。
おかしな事に、
今もそんな夢想ばかりしている。