
3月12日。水曜日。
横殴りの雨。
…そんな苦労のすえ、収めた一枚。
今、見ても、その感慨が甦る。
…それは、胸の空く思いだった。
恐怖で足元もふわふわしていた。
それ以上に、この夢の光景は、
心をふわふわと、何処か遠くへ運んだ。
…おおお、なんとも、はや。
言葉にならない。
見事なバランス、見事な調和。
この完成を夢見て、
ルートヴィヒは歯痛に苦しめながらも、
なんとか現実とつながってこれたんだろう。
彼の虫歯は相当なものだったらしい。
口を開けると、強烈な口臭と、
痛みを和らげるクロロフォルムの臭いが
まぜこぜになって、対人を滅入らせた。
両頬は、虫歯で腫れ上がり、
せっかくの美貌も晩年は台無しに。
歯痛による寝不足と薬漬けのため、
顔色も紫がかり、目の下はくすんでいた。
もはや廃人と化したルートヴィヒ。
人を愛すこともできず、
ひたすら自己の陶酔だけに夢中となった。
そんな状況下で、
このマリエン橋から
眩惑の城を眺めていたルートヴィヒ。
「なんだか、わかる気がする。」
横殴りの雨にぶたれながら、
風に足元さらわれながら、
ルートヴィヒの想いを胸に、シャッターを切った。
ああ、ディレッタンティズム。