
3月11日。火曜日。
贅を尽くした城の内部を堪能する。
いまだに自分がなぜ、ここにいるのか、
把握できていない。
あのルートヴィヒの城内に、
…ヴィスコンティの映画の舞台に、
…ヘルムート・バーガーが演じた現場に、
…自分が今、足を載せている。
城は思った以上に狭かった。
豪華絢爛で、過剰な装飾に
耽美主義なルートヴィヒの人生が凝縮されていた。
昇降式の食卓も、そこに在った。
なぜここまでデカダンスに傾倒したのか。
究極のナルシストであったことには違いない。
他者を受け入れない、自己溺愛な性格は、
ある意味、このボクにも当てはまる。
禁断の愛や、禁忌な行為に惹かれるあたりも
三島由紀夫文学と共通するところだ。
なぜだろう。
ヴィスコンティの「ベニスに死す」を
敬愛して止まないのは、
まさに禁忌の恋とデカダンスに溢れているから。
追いつめられ、破綻するしかない状況での
美の陶酔が、何とも魅力的だから…なのか。
この耽溺が、自己破滅が、
ボクを虜にする。