
麻酔の話をひととおり終えて、遅めの昼食。
5階にある喫茶店で「ハンバーグ定食」を食べる。
看護士や医者が聴診器を肩にぶら下げ、熱心に語らっている。
本人を識別するネームバンドを右手にはめていたので、
自分もすでに彼らに取り込まれているのか…と思うと、居心地が悪かった。
執刀医から手術内容の詳細を聞かされるまでのあいだ、
「大人の科学vol.9:究極のピンホール式プラネタリウム」を制作する。
デザイナーが、入院の暇つぶしに…とわざわざ買ってきてくれた。
大人の科学:究極のピンホール式プラネタリウム
作ってみると、意外に時間を忘れて没頭してしまった。
夜の病室で試してみることにする。
呼び出しを受け、ナースステーションに。
執刀医のO先生は、手術が長引いているため代理の医師に
明日の手術内容の説明を受ける。
あらためてMRIの画像と膝の模型を照らしながら、
関節鏡をどのように扱い、半月板を削除するのか、その流れを聞く。
「MRIではわからない関節の状態を、カメラを入れてしっかり検査するのが、この手術です。」
「だからこれは手術のカタチを取った最終の検査だと思ってください。」
患者の気持ちを軽減するためだろう、言葉を換えて巧みに説明をするが、
健康な人間には、カラダに穴が開けられることすら抵抗がある。
セカンドオピニオンとして受けたMRIの画像も比較してみる。
初診から2週間経っての画像…少しは変化があるかと思いきや、
「損傷している」箇所は、しっかりと同じ場所に留まっていた。
「90%の確率で損傷していると思われます。」
明日の「最終検査」で、その全貌が明らかになる…と
代理の医師は自信たっぷりに語った。