
生命讃歌宣言by梵寿綱
人類の歴史の中で、建築は常に日常の社会に深く根を下ろしながらも
さらにそれを超えた次元への架橋の役割を果たし
永遠の実在への人々の理念と信念とを象徴する
文化的装置として創造されてきた。
そして決して便宜的な社会や経済の要求の為にではなく
生きる時代の文化や風土や民衆を讃歌する
記念的構築物として築かれてきたのだ。
今日の如く多様に変化する便宜的な社会の枠組みを
弥縫するためのコンセプトに汲々とする現代建築に
根源的な創造性を期待することは不可能である。
この失われた時代の仲で、建築家・梵寿綱と羽深隆雄は
夢と神話を象徴し芸術と工芸を建築空間に統合する手段を模索し、
ささやかながら実践を通じて営為の成果を社会に問いかけ続けてきた。
機能主義の旗印の下に金融経済や産業構造に
奉仕するビルディング・デザイナーたちは、
狂信的な伝道師として、国際的な表現というコンセプトを旗印に、
人間にとって不可欠な文化や習俗の伝承を否定してきた。
しかし、人間の生命の衝動は、歴史や文化や地域や伝承の形式の
相違を超えて通底しており、人類が存在する限り変わることはないのだ。
いつの時代でも予言的な創造者や革命的な思索家は、
人々に直接働きかけ、日常生活の価値転換という
神秘的経験へ人々を目覚めさせようと努めてきた。
人々の心を彩っているものは、宇宙にあめねく響く生命の鼓動である。
しかしこの彩りや響きは、五感や思考による理解を超えていて、
創作の役割を担う者たちの心の鏡に映し出され、
造形の姿や反映する光芒や共鳴する響きを得て初めて、
人々の身体に所在する生命の泉・心と響き合う。
現実を超えたものに現実の姿を与えてその彼方にこそ
至福な世界の開示を信じる故に
建築家・梵寿綱と羽深隆雄は生命に従い天職を全うして
今ここに建築における「生命讃歌」を宣言する。
(羽深隆雄&梵寿綱共著『生命の讃歌』まえがき)