【上田現】カッシーニ


【元ちとせ】カッシーニ

たとえ世界が喜びにあふれ、光輝いた朝を迎えても
もしあなたが消えてしまったら 私にとっては もうここはさみしい所

はっきり目に映る程 こんなに近くにいる
唯それだけのコトが 本当に不思議でウレシイ

土星の環っかがある理由を
知らないまま この地上で今日も暮らしてるけど

重なる手と手の合間に広がる
銀河の深さに ねぇ 吸い込まれそうだよ

世界中に転がってる 石ころのような でも誰も壊せない祈り
あなたを想うだけでも こんなに苦しくて こんなにも愛しい

カンパネルラが聞こえた 何処かで誰かが生まれた
そして誰かが消えてく わたしはあなたの手を握ってる

土星に環っかがある理由を
考えてみた
ガリレオはきっと笑うかな

好きで 大好きで  もうどうしようもなくて
気がついたら あなたの周りを ぐるぐる廻ってる

土星は今日も遠く空にいて
見渡しても 見上げても 私には 見つからない

好きで 大好きで もうどうしようもなくて
気がついたら あなたの周りを 廻ってた 想い

      ●

上田現の【遺作】と言われている。

妙な符牒を見つけてしまった。
この「カッシーニ」はNASAの土星探査機「カッシーニ」から
持ってきたタイトルだと思うが、

この土星探査機「カッシーニ」は
土星の環を見つけたイタリアの天文学者
「ジョヴァンニ・カッシーニ」にちなんで命名されている。

歌詞の中で「カンパネルラが聞こえた」とある。
「カンパネルラ」とはイタリア語で教会の鐘のこと。

そして「ジョヴァンニ」と「カンパネルラ」は
【宮沢賢治】の「銀河鉄道の夜」の登場人物だ。

おそらく上田現は、そこまで符号を合わせて詞を完成させている。

「春と修羅」の序に出てくる有名な一節、
 
 わたくしといふ現象は
 假定された有機交流電燈の
 ひとつの青い照明です
  (あらゆる透明な幽霊の複合体)

 風景やみんなといっしょに
 せはしくせはしく明滅しながら
 いかにもたしかにともりつづける
 因果交流電燈の
 ひとつの青い照明です
  (ひかりはたもち、その電燈は失はれ)

風景やみんなと一緒に
忙しく明滅しながら確かに灯り続ける
「ひとつの青い照明」が自分であり、あなたである。

これは「ゆれる。」のコンセプトともなった部分。

忙しく明滅しながら「ゆれる」ひとつひとつの青い照明たち。
そんな「共生」をテーマに撮りたいと思ったのが、はじまりだ。

      ●

 カンパネルラが聞こえた 何処かで誰かが生まれた
 そして誰かが消えてく わたしはあなたの手を握ってる

「わたしはあなたの手を握ってる」

「土星の環っかがある理由を
 知らないまま この地上で今日も暮らしてるけど」

「重なる手と手の合間に広がる
 銀河の深さに ねぇ 吸い込まれそうだよ」

上田現もきっと、「春と修羅」の一節を想いながら
この「カッシーニ」を作り上げたに違いない。
宮沢賢治へのオマージュも含まれているに違いないのだ。

 そんな符牒に気づいて、うれしくなった。

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昨日5月5日、日比谷野外音楽堂にて、
元ちとせを始めとする上田現に縁あるアーティストが
「UEDA GEN TRIBUTE LIVE『キコエルカイ』」を開いた。

天国の上田現に向かって、彼の楽曲を捧げた。
雨空だったようだ。

シリウスは見えたか。