【ちゅらしま】奄美写真ナイト!その2


もうひとつ、
忘れてはならないのが、
島尾伸三さん潮田登久子さんのトーク。

 この不思議な眺めは、
 よほどのことがない限り変わることはなさそうで
 建物のひとつひとつが、欲と涙の結晶体のはずで
 ですからどことなくもの悲しいのです。
 食べるために生き、生きるために食べ、そのまま
 充足できる充分な人格が備わっていない私の不幸。

 他人が欲望を具体的に獲得する様が羨望を生み、
 羨望の具体化が羨望の的になり、
 そうやって欲望を再生産する状態が生まれ、
 他人の欲望が自分の欲望になってしまうのです。
 この繰り返しが産み出す欲望の循環と増長が、
 醜くも実は、人類の歴史の原動力なのかもしれません。

              (島尾伸三 「東京~奄美 損なわれた時を求めて」抜粋)

文章の丁寧な語り口調や遠慮気味なフレーミングの写真とは裏腹に
島尾さんのトークは、すべてが剥き出しで、ストレート。

特に「古き奄美大島の時間の流れ」を語る時は、
父親の面影が見え隠れするのか、
50年前の島尾さんがその垣根から顕れるようで、
話す内容すべてが面白く、楽しい時間を過ごすことが出来た。

沖縄と奄美がここまで近しい存在だったとは。

「島唄」という表現も実は部落を意味する「シマ」が語源で、
その響きを沖縄のアナウンサーが持ち帰り、
それをBOOMの宮沢が唄にすることで、沖縄に定着した言葉。

そういった歴史の一端に触れられるだけで、
目の前に広がる風景が意義深いものになる。

邁進するだけでなく、省みる。
その行為のきっかけは、歴史を知ること。

島尾敏雄、島尾ミホ、島尾伸三、潮田登久子、しまおまほ…。
その家系の流れを知り、著作に触れ、人柄に触れ…
堆く積まれた時間の重みを知る。

表層の事象だけでは決して知ることのできない
含蓄のある物語。

過去を知ることで、人間はもっともっと思慮深い生き物になる。
そんなスタンスの島尾夫妻と直に接することが出来て、
この上ない幸せを感じることが出来た。

      ●

島尾さん、坪山さん、
共にのっぴきならない業を抱え、
真っ正面からそれを捉え、生きている。

40歳からの再出発も悪くはない…
そんな勇気をもらった「奄美写真ナイト」だった。