日曜日の出来事 その1「花子」


土曜日にも増してぽかぽか陽気の那覇市内。
気持ちよい天気。…まさに散歩日和だ。

まずは桜坂劇場で「花子」を見る。
「花子」

1979年生まれの今村花子さんは知的障害者。
言葉を発することができない。
だからってワケではないだろうが、
夕食の残飯で畳の上に「アート」を施す。

残飯で彩られた様々なカタチ。

ものすごくデコラティブにこんもりと表現される日もあれば、
焼き魚の頭にごはんつぶがひとつ…といったシンプルな日もある。
それを毎日、写真に収める母。

実は今村花子さんの存在は、大森克己ワークショップで知ってはいた。
2000枚に及ぶ「残飯アート」をスライドにして、無音状態で見せられた。
その膨大な数と、圧倒的な残飯の迫力に、どうコメントして良いモノやら…と、
当時はかなり重たく感じたものだったので、

この2001年に作られたドキュメンタリーも
散歩日和の日曜日に映画館で観るべき映画なのだろうか…と
かなり引き気味だったのだが…。

冒頭いきなり入る忌野清志郎が、すべてを吹き飛ばした。

「一人の女性に」作詞+作曲:藤井裕+忌野清志郎

 さみしくて我慢できないなんて一言も言ってない
 君がいないと生きていけないなんて一言も言ってない
 この部屋から出ていけなんて
 僕は今まで一度も言ったことはない

 君がいれば最高だなんて一言も言ってない
 この人生が幸せだなんて一言も言ってない
 この部屋にいつもいてくれなんて
 僕は今までに一度も言ったことはない

 あー空は青い
 青い青い空の下

 僕は今までに君以上の女性を知らない
 君がいないと生きていけないて言ったことはないけど
 この部屋から出ていけなんて
 僕は今まで一度も言ったことはない

 あー夜は暗い
 暗い暗いどのくらい暗い

 つまり僕は僕の心を君には一度も
 言ったことも伝えようとしたこともない
 僕は今この部屋で一人つぶやくのさ
 僕は僕の気持ちをわかりやすく伝えればよかった
 たった一人の女性に伝えればよかった

映画の感想をひと言でいえば、
「散歩日和にふさわしい映画」だった。

今村花子さんを囲む今村家の様子は、
追い詰められた重さもなく、淡々としている。

定年を迎えた父とテニスサークルを楽しむ母と、
音楽大学に通う姉と、その妹である花子さん。

花子さんへの愛が深いからこそ、
花子さんが施す「残飯」処理も「アート」として
楽しんで受け入れているのだな…と、素直に感じられる。
その母の度量の深さ、振幅の広さが、とても清々しい。
気負いもなく、特別な感慨もなく、ふつうの子として
花子さんと接している。

考えてみれば当たり前のことだが、
その強さが母なのだろう。

父や姉も一定のスタンスを取りながらも
花子さんを見守っているのが、よくわかる。

だからこそ「散歩日和」な映画に感じたのだ。
ひたすら前を向いて歩いてる映画…だと思った。