
【日下渉_フィリピン】岩波新書
https://www.iwanami.co.jp/book/b10160904.html
貧困、不平等、不正義に満ちた既得権益社会で、まともが機能する国家と努力が報われる社会を求めて、苦悩した民衆史。「善き市民」「悪しき他者」の二項対立でその因果を外部化し、「誰かをワルモノ」にするのではなく、ネガティブな要素も己の血肉と請け負い、内面からの「新生」でこの国の未来を掴もうと前傾で生きる人たち。著者は「土着の秩序」が「公的な秩序」に取って代わり、杓子定規な「規律」が横断することで生まれる排除の一面に紙面を割きながら、コロナ禍でのフィリピン人たちの共生能力を讃え、私たちが損なってしまいそうな「生きる力」を鼓舞しているのだと思う。
「人は自らが紡ぎ出した意味の網の目の中で生きる動物」である、とは文化人類学者クリフォード・ギアツの言葉。ここに生まれた運命を引き受け、自らの手で意味を紡ぐことができる、それが人間という動物である。まともに機能しない国家の下で、それでも努力が報われる社会を求めて躍動する。その能動的な生き様こそが、この本の核心であり、「フィリピン」から学ぶ姿だと思う。
追伸:新時代のフィリピン人として紹介されてたSB19とはどんなグループなのか、YouTubeを泳いでいたら、JMara”Mahal Kong Pilipinas”という魅力的なPVに辿り着いた。
https://www.youtube.com/watch?v=j_kPvYsC1pw
歌い手の背景はバラックのスラム街。「そう、私たちは大勢いて、懸命に生き、戦っているけれど大きな夢を抱くことさえ、遥か彼方のことのように思える」と〈Mahal Kong Pilipinasフィリピンの同志に〉訴えている。負の現実をまなざし、「こんなはずではない」と立ち上がりを即すJmaraの魅力的なブルースは、SB19の新風とは対極だ。しかし、両者共に「ここではない社会」を目指している逞しさに、フィリピンの希望を見た。
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